膝をつま先より前に出さないスクワットの弊害
佐々木接骨院院長、SASAKI STRENGTH & CONDITIONING代表の佐々木です。
皆さん、スクワットと言うトレーニングは知っていますよね。
キングオブトレーニングなんて別名もあったりするくらいのトレーニングの代名詞ともいえる種目ですね。
トレーニング番付で言えば横綱クラスのスクワットですが、そんな重要なトレーニングが、かなり前から間違った解釈がされ、それが広く認知されるようになってしまっています。
当院の患者さん、クライアントさんからもよく聞かれるこの間違った解釈。
今回のブログでしっかりと改めていきたいと思います。
膝を前に出さない
その間違った解釈とは、膝を前に出さない、と言うもの。
厳密にいうと、膝をつま先より前に出さない、と言う解釈です。
それを肯定する大きな理由は、膝を痛めないようにする、というものです。
実際によくみられる形はこんな感じ。
お尻を後ろに突き出して、上体が前に倒れる姿勢です。
膝をつま先より前に出さない、と言う意識を持つと、自然とこんな感じになります。
エガちゃんの江頭アタックそのままですね(笑)
この形が全てダメと言うわけではありません。
これが正しいスクワットとして認識されている事に問題があるのです。
これは一つのバリエーションとしてとらえ、この形に固執しないことが重要です。
それではこのスクワットのメリット、デメリットを紹介していきます。
メリット
①ヒップ、ハムが鍛えられる。
見て分かるようにお尻を後ろに突き出して、上体が前に倒れてる格好は股関節がしっかりと曲がっている状態になります。
ここから立ち上がると股関節が大きく伸展されます。
しゃがんだ時にお尻と太もも裏の筋肉がしっかりと伸ばされ、立ち上がりで強く収縮します。
ヒップヒンジと言う、骨盤の前傾を伴った動作が出来るようになるのも一つのメリットです。
ヒップ、ハムを強調して鍛えたい場合は一つのバリエーションとして有効ですね。
②膝を痛めない
確かにこれは言えない事はありません。 だって膝を曲げてないから(笑)
角度的にも90度も曲げていないので、膝への負担は軽いです。
しかし、この負担の軽さはこの後お話するデメリットに繋がっていきます。
デメリット
①腰への負担が強い
上体が強く前傾するため、それを支える背筋郡、特に腰への負担が大きくなります。自重のみではさほどの負担にはなりませんが、バーベルを担ぐと負担は増大され腰を痛める危険性が高くなります。
この場合、よく見られるのはバーベルを肩甲骨辺りに下げた位置で支えるローバースクワットで、この場合、下げたほうがバーベルから腰までのモーメントが短くなり、負担が軽くなります。
言い換えればこの形のスクワットを行うのであれば、バーベルをローバーの位置で支えるのが前提条件と言えます。
②トリプルエクステンションの欠如
正確な効果的なスクワットは、トリプルエクステンションが動作の中に存在します。
股関節、膝関節、足関節が同時に伸びる、スクワットのフィニッシュ時の理想的な形です。
これが江頭アタックでは、股関節のみが強調されて、他の関節との連携がありません。
股関節のみに強調した目的だとしたら妥当性がありますが、動作を改善する目的には不十分です。
③膝関節周囲筋の弱化
これがメリットの裏側の部分になります。 膝に負担がかからないと言うのは、膝を使っていないから。 そうなると膝周囲前面の筋肉を構成する大腿四頭筋は筋力、筋量ともに低下してしまいます。
逆にこの低下が膝痛を招いてしまう恐れもあります。 実際に当院の患者さんでもいらっしゃいました。
負担がかからないように膝を使う事が一番望ましいスクワットの形です。
理想的なスクワット姿勢
①重心 土踏まず付近。目的によって各フェーズで前後に移動する。
②足幅 腰幅より少し広いくらい。つま先は十時十分、十一時位分辺りの方向。
③目線 まっすぐ前を見る
④しゃがむ 椅子に腰かけるように、上体を前傾させずに目線は前を見て、腹圧を高めてしゃがんでいく。
⑤ボトム 太もも前が地面と平行になるまでしゃがむ。(ハーフスクワットの場合)
⑥立ち上がり 目線を変えず、上体を真っすぐに保ちながら立ち上がる。 この時、トリプルエクステンションを意識する。
とは言え、正確な姿勢でしゃがむことが出来ていれば、立ち上がるときに自然とトリプルエクステンションが出来ている事が多い。
動画でもご確認ください。
こんな矯正法も
この膝を前に出さないスクワットが染みついてしまって、なかなか理想的なスクワットが出来なくなってしまった方もいます。
そんな方には矯正法として、フロントスクワットをやってみるのも良いと思います。
負荷が体の前に掛かる事で、支えようとすると強制的に上体を立てるようになります。
他にもゴブレットスクワット(ダンベルを胸の前で持ってしゃがむ)やスプリットスクワット(脚を前後に開いて行う)も良い矯正法です。
全て上体が立つことで自然と膝が前に出て、理想的なスクワットに近づいていきます。
まとめ
お尻、ハムストリングスを鍛えるために、一つのバリエーションとして江頭アタックはとても有効です。
しかし、これを正しいスクワットとして取り組んでしまうと、以上のようなデメリットが出て来てしまいます。
骨盤の形状や脚の長さなど、個々の解剖学的特徴によって適切なスクワットフォームは異なります。
「膝をつま先より前に出さない」というルールを全ての人に当てはめると、不自然なフォームを強制されることがあります。
膝をつま先より前に出さないスクワットフォームには、特定の場面で有用な場合もありますが、過度に重視すると逆効果になることがあります。
正しいフォームを理解し、柔軟性や筋力バランスを考慮した個別指導を取り入れることが、怪我を防ぎつつ効果的なトレーニングを行う鍵です。
スクワットは継続的に行うことで、全身の筋力強化や日常生活での動きの質の向上が期待できます。
体の状態やトレーニングの目的に合ったスクワットを行いましょう!
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